こんにちは!当ブログの管理人で水族館飼育員のめだかです!
今日も水族館について学んでいきましょう!
魚のパッキング方法について解説
自分で生き物をパッキング、梱包できる知識が身につく
今回は大学時代から数年間、金魚の問屋さんに住み込みで働いていたことのある管理人が採集や生物交換時の搬出などに活用できる魚を袋詰めする方法=パッキングについて解説していきます!
当時は1日で60~100個近くパッキングしていたので、ある程度細かく説明できると思います!
飼育員以外でも、汎用性の高い技術なのでよかったら参考にしてみてください!
それではいきましょう!
パッキングまでの手順
パッキングにおいて一番重要なことはパッキングするまでの準備です。
パッキングや輸送は生体にとってストレスです。
輸送のストレスから病気を発症する、なんてこともあります。
可能性を少しでも減らす為にパッキングをする前の準備がとても大切です!
今回は魚が水族館(または家)で飼育されているという前提のもと解説していきます。
状態の観察
調子が悪い魚を無理にパッキングして送ろうとすると、送り先でそのまま病気になる、なんてこともあり得ます。
ある程度のストレスには耐えられるよう、パッキングまでに調子のよい状態を維持することが大切です。
普段から飼育環境や健康状態を確認し、輸送に耐えられる状態かしっかり見極めましょう。
- 飼育中のエサの食いつきが悪い
- 泳ぎが弱弱しい
- ヒレをたたんでいる
こういった状態が見られた場合は輸送以前の問題となり注意が必要です。
分かりやすい例でいえば、下の金魚のように白点病の症状が見られる場合、魚自体が衰弱していると分かるので、無理な輸送はしないといった感じです。
逆を言えば搬入時は魚は搬入時は弱っているので、迅速で的確なケアが必要になります。
因みに、金魚の問屋では発送する金魚を選るときには以下のことに気を付けます。
- 泳ぎ方が変ではないか
- ヒレの欠損、形は変ではないか
- 口曲がりではないか
- 鱗の欠けはないか
- 体表に発赤や寄生虫はいないか
- 全体的に美しい体型か
など
言葉で表すと結構簡単そうに見えますが、一つとして同じではない金魚を迅速・的確に見極める必要があり、慣れるまでは結構大変です
なれるまでは「選るのおせーぞ!」とよくどやされていました
エサ止め
発送する生体の状態が問題なければエサ止め(餌止め)を行います。
なぜこの作業が必要かというと、
〇輸送中の水質と酸素濃度の悪化の防止
〇水温変化やストレスによる消化不良を予防
するためです。
少ない水量と限られた酸素の中での水質を維持するためにはできるだけフンが出ない状態が望ましいです。
魚種やエサの種類など条件で変わりますが、大体1~3日くらいの期間で行います。
餌止めの期間を考える上で重要になるのが胃です
魚の多くは数日はエサが取れなくても大丈夫なように胃にエサをストックすることができます
そのため、餌を止めても体内が空になるまでのラグを考える必要があります
逆にメダカや金魚などの無胃魚であれば、餌止めに日数をかけすぎても良くありません
余談(読み飛ばしてOK)
この餌止めの作業は養殖や養魚でも行われています。
数日前から魚を生け簀に入れ、胃を空にしてから、出荷しています。
活魚として輸送する場合、先ほど説明した水質や酸素の低下を抑えることはもちろんですが、
- 飽食時に〆ることでの肉質の悪化の防止※
- 余分な脂肪を減らし身を引き締める
※筋肉中のグリコーゲンが乳酸に変化することで肉質が酸性になりタンパク質が変性する
こうした養殖魚の鮮度を維持する為にも重要だと分かっています。
水作り
パッキングする際に魚と一緒に袋に入る水についても少し触れておきます。
先輩飼育員には「魚を飼育してる水をそのまま入れたらいいんじゃね?」と言われることもあります。
しかし、個人的な見解としては搬出用の水(できればベアタンク水槽)を作っていた方がいいです。
〇水槽の水質の懸念
→多頭飼育の場合は輸送における水質が万全とは言えない
〇輸送には過剰な濾過細菌等
→輸送時の環境変化で逆に水質を悪化させるリスク
〇水槽に潜む病原体のリスク
→混泳魚や底砂などに潜む細菌や寄生虫
アクアリストの方には耳タコかもしれませんが、アンモニア酸化菌や亜硝酸塩酸化菌などの濾過細菌を含めた細菌の水中での増殖バランスが崩れてしまうことが魚の飼育を失敗する原因の一つです。
水質を維持する為の濾過細菌の仲間は好気性菌のグループに属するため、魚と同様に酸素を消費します。
そして魚と同様に細菌も死ぬと水質を悪化させます。
薬浴する際に濾過槽をとめる理由も、薬剤によって濾過細菌が死滅し水質が悪化する(水が濁る)ためです
できるだけ迅速にベアタンクでの治療に移す方が考慮するリスクが減ります
濾過細菌は水質を維持する≒飼育管理の負担を軽減するという側面では強い味方ですが、こと短期的な輸送においてはリスクであると考えています
昔の記事ですが簡易的な各濾過方法の役割も解説しています!
実際、自分が問屋で働いていた時は、金魚のとは別に水温・水質をあわせた水がストックされたデカい水槽の水でパッキングしていました(効率化という面もありますが)。
魚種や状況を鑑みながらですが、失敗した時の判断材料を減らす為にも意識して続けています。
このやり方が絶対正しいというわけではないです
水合わせのストレスなど考慮することもでてくるからです
ご参考程度に
パッキング
さて、長々しい前提条件を乗り越えいよいよパッキング方法です。
実際に管理人がパッキングした写真と一緒に説明します
- :袋の選定
- :水を入れる
- :魚を入れる
- :エアーを入れる
- :パッキング
- :漏れチェック
➀:袋の選定
魚体の大きさ、数に適した袋のサイズを選びます。
袋が大きければ水質が急変化するリスクは減ります。
しかし配送業者に依頼を考えた場合、以下を想定して考える必要があります。
- 配送ルール(大きさ、重量など)
- 箱の耐荷重や数
- 送料
時には複数の魚を搬出しなければならない場合もあるため、いたずらに重くしたり箱の数を多くしないためにも適正サイズを選びましょう。
あんまりにも重たいと配送御者さんに嫌な顔されたり、場合によっては配送拒否される場合もあるので注意しましょう。
また、配送業者指定のサイズや数に収まらない場合は専門の業者か自分たちで運ぶ必要があります。
管理人も水族館へのイトウの輸送(往復1,000㎞)や、魚の仕入れ(往復1,300㎞)など数々の輸送に同行させてもらいました
パーキングエリアで逐次、生体やエアーの状態を観察したり、渋滞に捕まらないようにルートを数プラン考えたりと存外やることが多かったです
➁:水を入れる
魚体全体が収まるくらいの水量を入れます。
大きい袋に入れる場合は、事前にカゴなどにセットしてから入れると型崩れがなく後の作業が楽になります。
③:魚を入れる
魚を袋に入れます。
できるだけ気泡を立てないように慎重に入れましょう。
飼育水ごと入れるか魚のみ入れるかなどありますが、管理人は基本、水合わせを前提として魚のみを入れています。
金魚を発送する際はこのタイミングで塩を一緒に入れていました。
浸透圧濃度を合わせることで余計なエネルギーを消費させないための工夫です。
④:エアーを入れる
袋を軽く閉じ、隙間からエアーを入れます。
袋を閉じるポイントとして袋の両端をそろえることです。
この口部分がバラバラだと水もれの原因にもなります。
口の内側を親指で押してあげて伸ばし、端をつまんでいくようにまとめるときれいに揃います。
袋のすき間からエアーホースを入れてエアーを注入します。
水族館や家にマイエアホースがない場合は、市販で売っているエアボンベなどを使う方法もあります。
淡水の場合は入れるだけで酸素を出す「酸素を出す石」という商品もありますが、個人的な見解として輸送においてはあまりオススメしません。
- コストパフォーマンスが悪い
- 持続時間が限られる
- 水質が塩基性に急に傾く
停電時やエアレーションが停まってしまったときの応急手段として利用するといいと思います。
また、空気で酸素を注入する他にも、エアレーションして輸送する水の溶存酸素量をあげる方法もあります
魚種や状況によって最適な方法を選んでみて下さい
⑤:パッキング
袋の口をしっかりねじったら、いよいよ輪ゴムで密封します。
輪ゴムはパッキングの命綱なので手で引っ張ってもしっかり伸びきる、粉(タルク)がかかった新しいものを使いましょう。
また事務などで使われる一般的な細い輪ゴムはあまりオススメしません。
ダイソーやホームセンターで売っている太めの輪ゴムがおすすめです。
管理人はこちらのゴムを愛用しています(なぜ1kgもあるのかは聞かないでください)。
折り曲げた袋の部分に輪ゴムをひっかけるようにして止めていきます。
袋の丸い部分にクビレがあると返しになって外れにくくなります。
ゴムが伸びきった状態で、グルグル巻いていきましょう。
こんな感じでパッキング完了です。
パッキングの巻き方は色々な流派?があるので、自分に合うのを試してください。
先っちょを引っ張ると輪ゴムが外れるようになっています。
ハサミでちょん切らなくてよいので楽です。
⑥:漏れチェック
最後に本当に密封できているか確認します。
この確認、見落としがちですが結構大事です。
ひっくり返すなどで水漏れがないのが確認できたらOKです!
まとめ
今回は魚類の搬出方法の一つとしてパッキング手順とその準備について紹介しました。
【パッキング前の準備】
- 状態の観察
- エサ止め
- 水作り
【パッキング】
- :袋の選定
- :水を入れる
- :魚を入れる
- :エアーを入れる
- :パッキング
- :漏れチェック
飼育員として毎日使う、必須の能力というわけではありませんが、他館とのやり取りや、採集など痒い所に手が届く、あってよかったと思える技術だと管理人は思っているので、特に魚類の飼育員を目指している方は暇な時にでも練習してみてください。
今回は以上です!
本日はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
またのご来館をお待ちしております!