こんにちは!当ブログの管理人で水族館飼育員のめだかです!
今日も水族館について学んでいきましょう!
【シリーズ連載】
ブログに多く寄せられる質問に飼育員である管理人が答えます
今回はブログをみて飼育員を目指す学生の皆さんなどから寄せられた質問の中で、
- 多くいただいた質問
- これは大切だなと思った質問
の管理人のめだかなりの回答を紹介していきます!
結構飼育員を目指す上で大切なことが詰まった質問・回答になっているので、飼育員を目指す方はぜひ参考にしてみてください!
たくさん寄せられた質問たちを今回は、以下の6つにまとめてみました。
- 大学選び
- 資格について
- 飼育員の適正について
- 就活について
- 仕事について
- 番外編(おまけ)
今回は仕事編第3回ということで、管理人のめだかが仕事で気を付けていることを解説します。
水族館で働いていて気を付けていることは何ですか?
今回の質問は、普段働く上で気をつけていることは何ですか?という質問がありましたので、
めだかが普段仕事をする上で気をつけていること、意識していることを解説したいと思います。
成果を意識して仕事に集中する!
最初は
- 生物の観察
- 水温・水質
- 調餌・給餌
- エデュテイメント(エデュケーション・エンターテインメント)
といったインターンで学ぶような具体的な仕事内容に沿って解説していこうと思っていました。
そんな基本は今後いくらでもインターンや実習、就職先で叩き込まれるだろうとそう思い、
今回は抽象的な、管理人めだかが学んでいる最中の、仕事の本質をかいつまんで説明できればと思います。
今回は、仕事で気を付けることは集中することという回答に対し、
- 仕事・成果とは何なのか?
- 管理人はなぜ意識しているのか
の順に解説してきたいと思います。
めだかが実際に働いたことで分かったことを紹介しているので小難しい内容になっていると思います
読んでみてよくわからん!という方は、「仕事はただの作業ではなく、作業+改善」だということだけ覚えてもらえればOKです!
仕事・成果とは何か?
まず、管理人めだかの考える仕事と成果とは何か?前提条件を解説します
仕事とは何か?
「小学校の低学年に水族館での仕事を説明してください」
みなさんならどんな説明をしますか?
- 水に生息する生き物を飼育する
- 生き物にエサを作って与える
- 生き物のことを知ってもらう
- 水槽を掃除する
- ショーでお客さんを楽しませる
- 生き物を調べる
こんなことでしょうか?
ただ、今回の回答にはいささか説明不足です。
あくまで水族館仕事の「一部」であり本来の仕事ではありません。
仕事とは=作業と改善の継続
つまり仕事とは、日頃の「作業」をいかにして「改善」していくかということになります。
「エサを切る」、「水槽を掃除する」はそれだけ切り取れば「作業」になります。
同じことを毎日同じようにやったとしても、改善がないのならそれは仕事ではなく作業なのです。
更に、この「作業」の中でも意識してほしいのが「正味作業」です。
これは日本を代表する自動車メーカートヨタが取り組んでいる仕事についてまとめた本、通称トヨタ本に書いてあるワードです。
トヨタでは作業を以下の3つに分類し、それぞれのムダを見つけ改善します。
➀正味作業:付加価値が有ること
・水槽の展示、イベント、体験、グッズ販売、接客など
➁付随作業:付加価値は無いがやらないといけないこと
・測温、調餌、給餌、水槽清掃、グッズ発注など
③ムダな作業:付加価値も無くやる必要もないこと
・効率の悪い作業、目的のない会議、ミスを誘発する仕組み
自分はこの➀までしっかり考えている飼育員や館長さんがいる水族館が成果を出していると感じています。
こう論じると中には「金の亡者」だの「生き物ことはどうでもいいのか」とか「水族館は博物館と同じ公共施設だ!」などと言われます。
ではあなたの給料はどこから来るのか?
大前提として運営するためのお金すらないと水族館なんて続けられません。
それすら用意できないのなら、そもそも水族館という施設そのものが成り立ちません。
1.自分たちがもらう給料はどこから出るのか?
2.それを知って自分はどのような仕事をするべきなのか?
もしみなさんが飼育員だけではなく、会社員としてどこかの企業に勤めたときにはぜひこのことを思い出してもらえれば、今回の内容は十分です
余談:同じ作業でも報酬が違う(飛ばしてもOK)
少し脱線します。
水族館飼育員を目指すみなさんには、「水族館飼育員は給料が安い」
というのは悲しいことに周知の事実だと思います。
原因の一部として挙げられるのが、
従来の日本型雇用制度による勤続年数と時代の流れによってハイコスト人材になってしまった職員の人件費の穴埋めです。
日本型雇用制度:年功序列制と終身雇用制
- 1950年代からの日本の高度経済成長期が普及した背景にある
- 規模をどんどん拡大したい企業側の早急な人材の確保と生活の安定と補償がほしい労働者とのニーズが一致したことが現在の日本の雇用制度が誕生したきっかけ
- 日本経済が右肩上がりに成長する前提で普及した背景もあり、現在経済が停滞した日本では崩壊しつつあるとも言われる
つまり、ベテランスタッフの勤務年数と共に上がる人件費の一方で、
経済の停滞など様々な要因で水族館の経営が停滞(入館者減、物価高、課税など)したことで上がる運営費分、
若い社員の給料に還元できない問題です。
出したくても出せない…けど安くても募集に人が集まってくれるというのが現在の実態です
専門性が求められる属人的な作業なら別ですが、エサを切るなど標準的な作業で報酬が違うって疑問に思います。
アルバイトやボランティアの方でもできる作業を、比較的高い給料をもらう部長などの人間が行うのは、経営的に見れば損でしかないわけです。
中には
やり方や作業スピードがちがう
昔は俺らも安かった
と仰る方もいらっしゃいます。
ただ、誰でもこなせる効率的な「作業の仕組み・システム」を作ることこそ、
本来上の立場の役割であるはずで、そこに仕事としての対価が発生するのが正しいはずです。
また、今から飼育員になる方たちが同じ年代で同じ価値の給料をもらうことができるのかは個人としては疑問です。
誰が悪いという話ではなく
「自分は仕事をできているか?」
「ここは離れた方がよい職場か」
という気づきぐらいに留めておくことをおすすめします
自分もそうでしたが、人と比べていると本来の仕事に集中できなくなります
成果とは何か?
ではただ、目の前の仕事に取り組めばいいのか?とえば不完全です。
成果が伴うことが仕事に意味に大きく繋がってきます。
成果とは=あることを行うことで得られる良い結果
仕事は「作業を改善すること」と説明しましたが、仕事の先にあるのが成果というイメージです。
水族館であれば入館者の数や評判がまず思い浮かぶ成果でしょう。
管理人の経験をもとにした具体例を紹介します
【よい展示?(ほぼノーフィクション)】
はぁ~忙しい、忙しい
何されているんですか?
最近始めたボトルアクアリウム展示が毎日忙しいんだよね
新しい展示だから見栄えよくしないと
大変ですね~、でもそんなに手間かかりましたっけ?
一度環境を構築すれば循環装置がなくてもある程度は水質維持できるっていう水槽ですよね?
そうなんだけどね、コケとか出るし、水草伸びるじゃん?
それをお客さんに見せるのはどうかと思うのよ
なるほどですね~(最初大変だけど環境構築できれば手を離れても飼育できますよ、という趣旨で展示してなかったか?既存の仕事放り投げて毎日朝夕2時間じっくりかけてやる?)
大変なのにお客さんは全く見ないんだよね
場所も悪いし、もう少し金をかけてインパクト出さないとさ~
ゆくゆくは常設展にしたいしさw
ほ~ん(機材だけでも新品で10数万以上してるのに、お客さんのせいにしてまだ金かける気かよ、大変なら他スタッフに共有すればいいのを全部自分でやるからな…)
他の人にも任せたいんだけど…やる気がないのか声かけてくれないんだよね
()
ツッコむところが多いと思いますが今回は割愛します。
一見仕事に熱心に見えますが、肝心のお客さんに見られていない
改善をしないは成果を出す姿勢は仕事として不適切です。
水族館の主な収入が入館料である以上、
仕事の先にはお金を払って見に来てくれるお客さんがいること。
そのことが仕事の成果に深く結びついていることを忘れてはいけません。
水族館で成果の指標となる例
入館者数
- 有料入館者
- 年間パスポート購入数
- 団体受入れ数
- 入館者の属性
- など
売上
- 入館料
- 売店の売上
- 会員費
- など
認知度
- TV番組への露出
- 新聞掲載
- SNSのフォロワー数、投稿へのエンゲージメント
- など
レビュー
- アンケート
- ネットメディアでの評価
- 来館者のSNS投稿
- など
明快なのはみなさんもご存じ、入館者数ですよね。
入館者V字回復!なんて見出しのニュースはつい見てしまいます
関係者の中でも分かりやすい指標になります
それだけ入館者数に運営の比重を置かざる負えなくなるわけですが
管理人はなぜ意識しているのか?
結局あんたはなんで意識してるんだい?
私の素晴らしい教えをみなさんに伝え、素晴らしい飼育員へ導く
…ちやほやされたい…というつもりはありません笑
単純に自分にいいことがあるから意識しているというだけです
【仕事に集中すると管理人めだかに起こるいいこと】
水族館での信頼が貯まる
- 裁量権の増加→できることが増える
- 提案が通る確率アップ&協力者が増える(展示の手伝いや給餌補助など)
- 水族館館長に近づく
経験値が増える
- 日常業務作業が早くなる
- より正味作業(企画、レイアウト、解説作成作業等)に時間を割ける
- 前回より良い成果が出しやすくなる
- 水族館館長に近づく
仕事が楽しくなる
- 精神の安定
- 自己肯定感の上昇
- 新しい好奇心
- 水族館館長に近づく
前提条件として、
- 命令される仕事より自分の裁量がある自由な働き方が好み
- どうせやるなら人の役に立ちたい(大きな成果を出したい)
こういった自分が働く上での価値観があります。
つまり今回の回答の背景を説明すると以下のようになります。
【自分の裁量で働き、大きな成果を出したい!】
→アイディアや試行錯誤できる時間をつくる
→既存作業の改善によって余暇時間を産み出す
→作業改善案実行のために他スタッフの認証を得る
→他スタッフとの信頼関係の構築&館長(一応の管理権限のトップ)を目指す
→信頼と館長を目指すために小さな成果を出すため目の前の仕事に集中する!
と、大変まわりくどい自分ロジックが裏側にあります。
結局、自分の価値観・目的にのっとった個人の考えなので、
みなさんが必ずしも真似する必要はありません。
飼育員としてこういう考えの奴もいるんだ
自分はこの水族館飼育員という職業にどう向き合おうかな
あくまで考え方の1サンプルとして覚えてもらえればうれしいです(大分クセ強めですが)。
注意点
最後に今回の解説の注意点をのせておきます。
働き始めは人間関係にも気をつける
仕事に集中するが管理人のスタンスですが、
水族館で働き始めは最低限人間関係にも気を使いましょう。
というのも、みなさんが仕事に慣れるまでのミスをカバーしてくれるのは先輩だったり上司、同僚だったりするからです。
自分から距離を置くような態度をとっていると後々苦しくなるのは自分なので、
最初の印象だけでも頑張って良くすることをお勧めします。
媚び売れ!靴舐めろ!とか言うわけではありません
あいさつ、お礼、笑顔、この3つを意識するだけで人間関係は全く変わってきます
一生使う便利スキルなので普段の生活から常習化するのがおすすめです
辞めるべき職場から離れる
今回の話の前提を覆してしまうのが、
働いている職場が仕事に集中できないやばい職場であった場合です。
やばい職場ではそもそも仕事に集中できず、
自分の精神が摩耗するだけという恐ろしい事態を招きます。
【辞めるべき職場】
- 会社の価値観が合わない
- 尊敬できる上司がいない
- 常に人手不足(入れ替わりが激しい)
- 適切な評価がされない
など
ヤバい職場の特徴は今後詳しく解説するつもりです
自分の変えられることに集中する
仕事に集中するときは自分が変えられる範囲に集中しましょう。
これ、恥ずかしながら、最近まで自分ができていませんでした、、、
どういうことかというと、
ベテランの○○さんはたくさん水槽を担当しているのに展示は雑で適当、代り映えもない。
やる気ある自分には小さい1つの水槽しか担当させてもらえない!
もっと色んな事に挑戦しないとダメなのに、他の人は何もやらない!
目の前の作業の効率も悪い事務作業なんてやってられない!
他の人にやらせればいい!
落ち着けよ。
こんな感じのことを裏で思いながら最近まで仕事していました。
思い出すたび自分の若さゆえの過ちに身もだえております。
実際、みなさんがいざ飼育員として働き始めると上司との確執、
待遇の不満、理不尽なことも多々、あると思います。
その場しのぎで我慢して、上手隠したつもりでも、周りには結構バレます。
不満が爆発して飼育員辞めようかと本気で考える夜もあるでしょう。
そんなときに自分に問うて欲しいのです。
「自分は、自分の仕事に本当に集中しているか?」
管理人がまずやるべきだったのは現状の待遇に不満を漏らすことではなく、
いかに目の前の自分に与えられた仕事で成果を出すかを考えることでした。
この小さい水槽でお客さんに何を伝えようか?どんな展示がよいか?
この事務作業をいかに効率化して新しいことに割く時間を増やすか?
今の自分に変えられないことに嘆くのではなく、
自分の変えられるところに如何に集中するか?
もし仕事や待遇に不満を覚えた時考えてみてください。
これ、実際に働いてみないと分かりづらいと思いますがとても大切だと思っています。
まとめ
今回は水族館飼育員として働く上で管理人のめだかが現在進行形で気をつけていることを解説しました。
【今日のまとめ】
仕事をする上で管理人が気をつけていることは?
成果を意識して仕事に集中する!
仕事とは:作業と改善を継続すること
成果とは:自分の与えられた仕事で良い結果を出すこと
なぜそう考えるのか?
- 命令される仕事より自分の裁量がある自由な働き方が好みだから
- どうせやるならより大きな成果を出したいから
という自分の飼育員として働く価値観を元にしているから
小難しい話になり、わかりにくいことも多かったと思いますが、
ぜひ仕事で迷った時や、自分はなぜ飼育員を目指しているかなど考えるときに参考になれば嬉しいです。
今回はかなり個人的な考えが強い解説だったので、
他の飼育員の方が必ずしもこのような考えを持っているかはわかりません。
飼育員の仕事は生き物の飼育が大切だから
成果とかそんなことは上の仕事だから
と言う、とある水族館の展示課長もいらっしゃいました。
これは否定できない確固たる事実だと思います。
自身も飼育技術を疎かにしている状態で水族館としての発展はないと日々重く感じています。
しかし、現場の人間が言うならまだしも、運営に近い立場の人間がそれをいうのはある種職務放棄であり、違うと思います。
飼育業務は飼育員の仕事の手段の一部であって目的ではないのがめだかの意見です。
水族館が成果(売上や社会教育)=仕事の先にあるお客さんの問題解決を果たすための目的、そのための手段として必須なのが飼育技術という位置付けだと考えるからです。
ハサミを買うお客さんはハサミが欲しいわけではありません。
「何かをキレイに切りたい」という問題を解決するための手段として購入するのです。
水族館へ訪れるお客さんはそれぞれが潜在的にもつ問題を解決する為にわざわざ来館してくれるのです。
そして全ての方(それも多くの方)が飼育員の飼育技術を見に来ているわけではありません。
「自分が勤めているお客さんはどのような問題を抱えている方が多くて、水族館はどのような答えを提示できるのか?」
以上を考え、選択し、実行することが水族館経営の本質であり、経営方針を達成する為の日々の活動やプロセスを改善していくことが水族館運営の本質だとめだかは思っています。
だいぶ思想マシマシになっていますが要は、飼育は大前提、その上で成果を出すために何を成すのか?当事者意識を持ってこれを考える意識が大切だと思っています。
仕組みが完成された大きい水族館や優秀なリーダーが引っ張る上り調子の水族館でもない限り、個人個人の熱意がその水族館の将来を決めるとめだかは思っています。
ここまで極端でなくても、自分の与えられた業務はしっかり成果をだすぞ!くらいの気持ちがみなさんの中に生まれてくれればうれしいです。
今回は以上です!
本日はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
またのご来館をお待ちしております!