こんにちは!水族館飼育員のめだかです!
本日も水族館と飼育員について学んでいきましょう!
飼育水についての基礎知識
前回の水族館の水の特性を踏まえて、水族館が生き物を飼育する上で必要な知識を解説します!
水温・水質について理解する
水生生物を飼育する必須知識ですのでぜひ覚えて帰ってください!
それでは早速行きましょう!
飼育水の基礎知識
水族館で生き物を飼育するときには飼育水つまりは水が重要です
異なる環境で成長した多種多様な生物を集約し、展示している水族館。
世界のありとあらゆる環境に生息する様々な水生生物にはそれぞれに適した環境(水)があります。
そこに全く同じ水しか使わないとしたら、きっとあなたが楽しみにしている水槽展示はもっと寂しいものになるでしょう。
水族館のコンセプト・役割に適した生き物を来館者に見て、知って、楽しんで学んでもらうためにも生きる土台である飼育水にはしっかり目を配ることが大切です。
飼育水で気を付けるのは以下の点です。
1.水温
2.水質
1.水温
まず水温について解説します。
飼育生物の生息していた環境温度の範囲内の水温になっているかが大切です。
熱い所から急に寒い所にいったら体調が悪くなるのは私たちもそうですよね。
特に大切なのは搬入時の水合わせです。
よくアクアリウム初心者が袋に入った魚をいきなり水槽に泳がそうとしますが、絶対にやってはいけません。
訓練された芸人でもない限り、体に相当な負担がかかります。
すぐに死ぬことはなくても、少し経ったら水合わせのストレスが原因で病気が出て死んでしまうこともままあります。
水合わせが大事なのは後述する水質にも関係します
水族館で飼育する際には生物にあった温度を事前に把握しておく必要があります。
搬入時に水温が高い・低い場合は適切に対処し、飼育する際も異常がないか毎日確認する必要があります。
水温に異常があった場合、飼育員はただちに対応しなければなりません。
対応として冷やす、温めるどちらかになります。
冷やす | クーラー、冷水を混ぜる、凍ったペットボトル、ファンなど |
温める | ヒーター、温水を混ぜる、ホッカイロ、エアコンなど |
並行してなぜ水温が変化したのかの原因を解明することも大切です
ヒーターが飛び出ていた、クーラーが停電で停止したなど様々です
明らかに違う短期的な異常であれば分かりやすいですが、気づかぬうちにだんだん水温がずれるといった分かりづらい長期的な異常にもしっかり気づかなければなりません。
そのために飼育員は毎日の仕事として水温を測定して、記録します。
【水温の測定・記録方法】
【測定】
- 飼育員が水温計をもって各水槽を直接計測
- バックヤードなどにある水槽の管理機器を確認し間接的に計測
【記録】
- 水温計と一緒に水温記録表を持ちあるき、都度記入
- 水温記録表をもとにPCにデータとして保存
水槽の上は滑りやすいので測定するときは間違えて落っこちないように気を付けましょう(戒め)
2.水質
次に水質について解説します。
水温と違い、少し計測が大変ですがとても重要な要素です。
一言でいってもその言葉の中には様々な要素を含んでいます。
- 塩分濃度
- pH(水素イオン濃度指数)
- 溶存酸素量(DO値)
- アンモニアイオン濃度
- 亜硝酸、硝酸濃度
- 塩素濃度
- 二酸化炭素濃度
- 硬度
- 濁度
- 金属イオン濃度
- カルシウム濃度
など
うげーっ、お、多い…覚えられない…
大丈夫です、めだかもすべてを正確に理解しておりません(おい)
今回は水族館で特に大事な部分、以下の項目をピックアップして解説します。
- 塩分濃度
- 溶存酸素量
- pH
- アンモニアイオン濃度
①塩分濃度
塩分濃度は生体の「浸透圧調節」に重要となります。
簡単に説明すると、2つの液体の濃度が均等になろうと移動する力だと思ってください。
この力は以下の3つがあると起こります。
- 濃度の濃い液体
- 濃度の薄い液体
- 半透膜
この3つが自然界では以下のようになります。
- 海水・淡水(濃い液体or薄い液体)
- 生物の体液(濃い液体or薄い液体)
- 生物の細胞膜(半透膜)
海水魚であれば通常、鰓(エラ)によって自分の体液より濃い液体=海水の塩分をエネルギーを使うことで排出します。
ただ、海水魚を自分の体液より薄い液体=淡水に入れると体内に必要な塩分がなくなり、体調を崩す原因となります。
水質の基礎の基礎のような話ですが塩分濃度は大切な項目です。
ただ、海水魚の体調が悪くなって水質を調べたら、雨水などで海水が薄くなっていたことが原因なんてこともあります
海水の塩分濃度は約3.4%、淡水の塩分濃度は約0.05%
どうやって塩分濃度を測るの?
いい質問ですね
流石に熟練の飼育員でもコナンくんみたいにペロッとしただけでは塩分濃度は分かりません。
引用:名探偵コナン 青山剛昌/小学館
なので塩分濃度計を使います。
こちらが水族館でも使われる業務用の塩分濃度計です。
塩分濃度は生き物を不調にもさせますが、時には治療するときにも活用します
詳細は今後の魚病編にて…
飼育員の知識次第で毒にも薬にもなるわけです
②溶存酸素量
溶存酸素量とは水にどれだけの酸素が溶け込んでいるのか調べる指標です。
これは言わずもがなですよね?
特に魚類は水中の酸素を取り込んで活動します。
以前お話ししたように、水族館は自然界と比べて過密飼育です。
酸欠になろうものなら、水槽全体の魚類は★になってしまいます。
水中の溶存酸素量を維持するためにエアレーションをしているわけです。
ただ、溶存酸素量まで計測する水族館はまれです。
計測器が高いうえに管理が大変だからです。
溶存酸素までしっかり測っている所は飼育環境の良い水族館だと個人的に思っています。
因みにこんな見た目です👇
楽天などで購入できることにびっくりですが、個人的に買う人はまずいないでしょう(笑)
飼育技術の優れた水族館を見つける指標として覚えておくといいでしょう
③pH
pHはざっくりいうとその液体が酸性なのかアルカリ性(塩基性)なのかを判断する指標です。
生息する水域の環境によって、酸性よりの水質を好むもの、アルカリ性の水質を好むものが存在します。
飼育する生物が酸性・中性・アルカリ性どれを好むのか知ることが重用です。
熱帯魚を飼育したことがある人は分かりみが深いと思います
ではどのようにpHを調べるか?測定方法を紹介していきます。
リトマス試験紙
小学校の時の理科の授業で使ったリトマス試験紙は簡単にpHを測る方法として有名です
色によって酸性かアルカリ性か簡易的に判別できます
ただ、正確な数値ではないことには注意が必要です
pH測定器
こちらは実際に水族館でも使われる業務用の測定器です
正確な数値が分かります
安いのもありますが、結構すぐ壊れるイメージです
【余談】※完璧に話が脱線するのですっ飛ばしてOK
因みに海洋のpHは海の表面で約8.1となっており、水深が増すほど下がります。
水深0mでpH約8.1→水深1,000mでpH約7.4
理由として、深海は死骸などの有機物がバクテリア(細菌)により分解され、酸素が消費され、炭酸イオンという酸性塩が増加するからです。
また、近年は温暖化により、二酸化炭素が海水にも溶け込むことで海水のアルカリ性が弱まっています。
④アンモニアイオン濃度
最後に特に重要なアンモニアイオン濃度について解説します。
アンモニアと聞けば、つい鼻をつまんでしまうほどの刺激臭が有名ですよね。
アンモニアは魚の排泄物にも含まれています。
アンモニアは特に有害な物質です。
毒性が強く、生体の容態が急激に悪くなるため飼育には天敵の物質です。
測定キットは水産系の大学に入学すれば実験で触れる機会があると思います。
水族館ではどう対処しているの?
答えは濾過です!
全ての水族館では水質を維持するために裏に濾過装置を設置しています。
表に出ることはありませんが、水族館のスペースを多く割いている装置です。
ただ、以外にも簡単なものならペットボトルで作れてしまいます。
引用:喜多方市水道課HP
まとめ
今回は水族館の水質についての基礎知識について解説しました。
飼育水で気を付けるのは以下の点です。
1.水温:飼育する生物に適した温度に気を配る
2.水質:特にアンモニアイオン濃度は毒性が高い
日々の観察と記録、データの蓄積
重要なことは水温・水質のそれぞれの項目をすべて測ることではなく、異常があったときにすぐに対応できるかどうかです。
そのために大切になるのが毎日の観察と記録を蓄積して比較対象をもつことです。
問題が起こったとき、原因を究明するための材料は膨大です
その判断の選択肢をデータによって削り、原因をいち早く突き止めるために日々の記録は大切です
今回軽く触れただけの濾過はとても重要な知識なので、原理と実際に水族館でどのように活用されているのか詳しく解説しますのでぜひ見に来てください!
本日はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
またのご来館をお待ちしております!